
日本図書設計家協会のオリジンはなんだったのか?設立当初1985年から数年間〜余りの会報からの「権利のページ」の記事を徐々に掘り起こして行きます。
●権利委員会だより
文化庁に意見書を提出
「図書設計13号」1989年3月31日刊行
文化庁の中間報告書に関する説明会に、当協会が参加したことは、会報12号に書きました。
その後、文化庁で関連団体からの意見を求めていることを知り、大川先生をまじえ、意見書をどうまとめるか、何回か拡大の権利委員会を開き検討しました。出版者に著作隣接権を認めるかどうかがポイントでしたが、とりあえず著作隣接権を認めつつ"ブックデザインには著作権がある筈だ"という諭旨で、大川先生に意見書をまとめていただき年末に配達証明付き郵便で文化庁に提出しました。しかし文化庁の法案提出は、経団連の圧力で断念せざるを得ませんでした。
今年になって、日本複写権センターは5月の設立準備を急いでいますし、本答申に向けて、文化庁でも動きがありそうです。(権利委員会・記)
意見書全文
文化庁長官 植木浩殿
1988年12月21日
日本図書設計家協会代表常任委員長
道吉 剛
代表事務局長
広瀬 郁
著作権審議会第八小委員会(出版者の保護関係)中間報告書に対する日本図書設計家協会の意見書
[一]さる10月21日著作権審議会は出版者の保護の問題を検討する第八小委員会の中間報告を了承した。
中間報告書は、まず、書籍、雑誌及び新聞について、その発行点数等が膨大な部数に及んでいる現状を把握し、出版物が情報伝達媒体として重要なものであり、かつ、今後ニューメディアの時代においても有力な情報伝達媒体として出版物が利用されていくものと考えられると位置付けし、出版者の出版活動を書籍、雑誌、新聞のそれぞれについて詳細に調査、把握したうえで、出版物の複製利用の現状を調査し、複製利用がかなりの数に上っていること、無許諾複製が著作者の権利と経済的利益に影響を与えているだけでなく出版者の出版活動から得られる経済的利益に影響を与えていると判断している(第一章)。
つぎに、現行法制により出版者は著作権法、不正競争防止法、不法行為法による保護の可能性があるが、それが限られた場合でしかないとし(第二章)、外国の立法例等の検討を行ない(第三章)、出版者の法的保護の必要性があること、権利の性格、保護の内容、権利行使のあり方について述べ(第四章)、結論として、「出版者に固有の権利を著作権法上認めて保護することが必要」としている。
[二]出版物のデザインにかかわる製作者をもって組織される当協会は、今次の中間報皆書が複写機器の発達・普及がもたらすいわば「コピー公害」とも言うべき弊害から出版者の出版活動から得られる経済的利益を守ろうとする姿勢には基本的に賛同するものである。しかしながら、以下の点において当協会の会員の基本的権利を脅かす虞れがあるのでさらに検討を要すべきものと考える。
[三]最初に指摘しなければならないことは、中間報告書は出版者の権利の保護の必要性として、①出版者が著作物の伝達者として重要な役割を果たしていること、および、②出版者が著作者の創作行為とは別に一連の出版者独自の知的行為を行なっているとの二点を挙げていることである(38ぺージ)。単に①の情報伝達媒体の製作者というにとどまるかぎり、それは単なる一営利企業の複写による利益侵害の問題に過ぎず、ひとの精神的創作行為の所産である著作物を保護する著作権法のなかに正当に位置付けすることは困難であると考えられる。
出版者の権利が著作隣接権として位置付けられているのは、本質的には、②の「出版者独白の知的行為」に依拠するものと考えられる。それゆえ、中間報告書においては出版者の出版活動に関して第1章3において、11ぺージから17ぺージまで7ぺージにわたって出版活動を詳細に記述している。これは中間報告書の一割近い量である。
そこで間題はこの「一連の出版者独自の知的行為」に関してである。第一章三出版者の活動(1)の書籍の項で出版者の出版活動として述べられている活動はすべて当協会所属の図書設計家が日常的にコミットしていることである。
図書設計家が出版「社」からの依頼もしくは注文により図書の出版活動に関与する場合、一般に考えられているようにその活動範囲は「表紙のデザイン」の範囲に限局されているのではなく出版活動全般に深く関わりあっている。
これを具体的に言えば、
①素材を駆使した造本計画の立案と制作
②組方体裁(レイアウト)の制作(割付)
③原稿の整理、目次、索引、奥付けの準備、制作
④イラスト、図版、写真、解説等の検討、制作
⑤色校正(印刷の仕上りの点検)
⑥宣伝、販売計画の立案と実行
⑦造本の指導、印刷のチェック
等の諸活動は図書設計家が日常的に携わっていることである。
また、活字を中心としてきた従来の出版文化は、いまや、視覚的デザインの整理と表現を抜きには考えられない時代となっている。当協会がブックデザイナーを本の装幀家とかエディトリアルデザイナーという既成の狭い概念から脱却して出版物を総括して「図書」といい、その「設計家」と名付けたのもかかる日常的なわれわれの活動の実態を反映させようとする意図に基づくものである。
中間報告書は出版者の権利を保護する根拠として出版活動が創作的行為に準ずる知的行為であることを挙げながら、この知的行為という以上の創作行為に深く関与するわれわれ図書設計家についてなんら言及することがないのは遺憾の窮みというほかない。特に貴庁がブックデザインを応用美術として著作物のらち外に置き、出版「社」その他が貴庁の公権的解釈に追随している現状においてはわれわれの協会員の基本的権利はますます蹂躙(じゅうりん)される危険性が大である。
よって、当協会は出版活動に中心的に関与した図書設計家、イラストレイター、グラフィックデザイナーなど出版「社」以外の第三者の権利についても明記すべきであると考える。[四]中間報告書では出版者の権利行使の在り方として「出版物の複写に関する権利は集中的に管理されることが適当である」、「商業用レコードの二次使用…の場合と同様、団体による権利行使を法律上定めることが適当である」(64ぺージ)とされている。現行著作権法97条2項が「前項の二次使用料を受ける権利は、国内において商業用レコードの製作を業とするものの相当数を構成員とする固体(その連合体を含む)でその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によってのみ行使することができる。」と規定していることからすれば、出版者の権利についても上記条項と同様「文化庁長官が指定する」団体による権利行使を念頭に置いているものと考えられる。
当協会としては、当協会および協会員が「出版者」の一員もしくは著作権者として上記指定団体への入会の道を閉ざされることのないよう貴長官の「指定」に当たってはくれぐれも留意されることを要望する次第である。
裁判による積み重ねが大切
大川宏(弁護士・日本図書設計家協会法律顧問)
昨年10月21日、出版者の権利に関する中間報告が了承された。この中間報告に基づき著作権法改正法案が今国会に提案されるはずであった。だが、経団連の反対のため見送ちれることとなったのは誠に残念だった。
中間報告は図書設計家にとって決して満足する内容ではなかった。図書設計家が日常的に関与している出版活動を創作行為ではなく「準ずる知的行為」として一段低いものと見ていることである。協会の目標から見れば断固反対する内容のものである。
しかしながら残念と思うのは以下の理由によってである。図書設計家の活動が創作行為であり、その作品が著作物として一般に公認されるためには二つの道筋があると思う。一つは、個々の作品が著作権を認められその集積の結果一般的に作品が著作物性が認められるという道筋(個別出版社との合意、個別の作品に関する裁判などの積み重ね)と、他は、図書設計家の活動が創作行為そのものでありその成果は著作物であることが初めから一般的に公認される道筋(法律改正、文化庁の解釈の変更など)があると思われる。今回法律改正がなされ複写権センターができ、協会が「著作権者」の団体として加入申込みをしたらどのような展開になっただろう。図書設計家を「著作権者」と認めただろうか。センターに参加できれば、そのなかで、利用料について協会が会員の立場を代弁することは勿論、センターが加入を認めることは個別会員が出版社との契約に当たって「著作権」を主張しやすくさせ会員の権利の向上に寄与しえたであろう。
センターが入会を拒否したら、協会自身が原告になってセンターを被告として訴訟に持ち込むことができる。個々の会員が個々の出版社と裁判をするのではなく、協会が図書設計家の、センターが出版社の代理人として代理戦争をすることになる。センター発足時にこのような裁判が起こされたらその影響は非常に大きく、個々の会員の権利向上に寄与することは間違いない(バイクの高速料金が普通車と同じであることの不当性を訴えた集団訴訟は料金値下げを勝ち取っている)。
私は代理戦争の代理人になりたかった。残念。
1989年2月24日記
