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日本図書設計家協会 The Society of Publishing Arts
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じっくり絵本を堪能したくなったら訪れてみましょう。
 協会員オススメの絵本美術館をご紹介します。


004/損保ジャパン東郷青児美術館
  「ちひろと世界の絵本画家たち」

004/損保ジャパン東郷青児美術館
  「ちひろと世界の絵本画家たち」

2012年7月7日(土)〜8月26日(日)

世界で最初の絵本美術館である「ちひろ美術館」のコレクションより
選りすぐりの25カ国53名の画家による絵本原画が楽しめる!

推薦者:小林真理


 絵本は人類が生み出した偉大な文化であり財産です。本来は子供のための文化ですが、我々大人がどれだけ絵本に助けられきたことか。大人にも必ず子供の時があり、親から子へ読み継がれてきた名作の数々は世代と時を越えて人々に感動を与え続けています。

 損保ジャパン東郷青児美術館では2012年7月7日(土)から8月26日(日)まで「ちひろと世界の絵本画家たち」を開催しています。
 2009年夏に 大変好評だった「ミリオンセラーの絵本原画と世界の絵本画家たち」の第2弾として開催された展覧会です。
 今回はいわさきちひろを中心に紹介する展示と、世界の優れた絵本画家たちを紹介する展示の2部構成になっています。いわさきちひろの画業の多彩さと、世界のさまざまな文化の違い、それぞれの作家の発想と表現力の多彩さ、技術の独創性の多様さを存分に楽しめる展覧会です。

 東京練馬の自宅跡に「いわさきちひろ美術館」が開館したのは1977年。ちひろ作品ばかりでなく世界の絵本画家の作品収集・公開・保存・研究に努めてきた美術館は1997年には安曇野ちひろ美術館を創設しました。
 現在ますますその活動を広げ、今ではちひろ作品約9,400点の他、32ヵ国200人の17,000点のコレクションを誇っています。今回はその原画から選りすぐりの25ヵ国53名の約130点が出品されています。

 主な画家と出身国もご紹介します。

日本:いわさきちひろ、長新太、荒井良二、出久根育
韓国:キム・ドンソン
ベトナム:タ・ヒー・ロン
モンゴル:ボロルマー・バーサンスレン
イギリス:ヘレン・オクセンバリー
ポーランド:ユゼフ・ヴィルコン
ロシア:エフゲーニー・ラチョフ
アメリカ:エリック・カール
南アフリカ共和国:ピエト・フロブラー
コスタリカ:ウェン・シュウ

1akaikutsu.jpgいわさきちひろ『あかいくつ』より(1968年 水彩・鉛筆)
14budouwomotsusyoujo.jpgいわさきちひろ《ぶどうを持つ少女》(1973年 水彩・鉛筆)
15ryuunomenonamida.jpgいわさきちひろ『りゅうのめのなみだ』より(1965年 水彩・パステル・鉛筆)
2kyabetsukun.jpg長 新太『キャベツくん』より(1980年 ガッシュ・鉛筆)
3yukkuritojojoni.jpg荒井 良二『ユックリとジョジョニ』より(1991年 アクリル)
4maashatoshiroitori.jpg出久根 育『マーシャと白い鳥』より(2005年 石膏パネルにテンペラ・油彩)
11kujaku.jpgエリック・カール《くじゃく》(1991年 アクリル・コラージュ)
10maashatokuma.jpgエフゲーニー・ラチョフロシア民話《マーシャとくま》(1965年 水彩・クレヨン)
13naditosyaoran.jpgウェン・シュウ『ナディとシャオラン』より(2008年 水彩・切り絵)

 特筆すべきことは、普段なかなかお目にかかれないアジアの多彩な画家の作品を展観できることです。また、一部の画家の作品は創作過程を垣間見ることができます。ちひろのアトリエの再現などの展示も興味深いです。
 大人も子供も楽しめる心癒される時間と空間、創作のヒントがたくさん詰まった豊かな展覧会です。



〈特別企画〉

日本図書設計家協会・女性会員5名による座談会
──展覧会「ちひろと世界の絵本画家たち」を観覧して

参加者:小林真理 ナツコ・ムーン ミツミマリ 山影麻奈 宮坂佳枝



小林:まず、いわさきちひろの原画を観て、いかがでしたか。

ナツコ:水彩のにじみや鉛筆のタッチをリアルに見ることができたし、また水彩なので紙が多少ゆがんでいるんですけど、それも彼女が生きてきた時間が感じられていいなあと思いました。

小林:そうそう、だから水彩画の保存て難しいんですよね。ちひろさんの絵はそれでもかなり状態がいい方だと思いますよ。きちんと下描きもしてて丁寧な絵ですね。

ミツミ:『ぽちのきたうみ』を見て不覚にもちょっとぐっときてしまいました。子供の目が皆シンプルな線なのに深くて、とても子供らしい目なのにどこか大人っぽい雰囲気が見え隠れしていて、それは絵本で見るより原画の方がより強く感じました。

山影:ちひろさんの絵の子供が、なぜか自分の子供のように見えました。私の息子は今4歳ですが、こんな表情するなあとか。子供って誰もがこんな表情をするものなんでしょうか。

小林:ちひろさんの描く子供の目は、みんなやさしいですよね。
でも、「戦火の子供たち」のあの目は、違いましたよね。

宮坂:私もあの鋭い目が忘れられません。やはりちひろさんご自身も子供の頃に戦争を体験していますし、1人の母として、子供たちをこれ以上傷つけないで欲しいという思い、怒りや悲しみがすごく伝わってきました。

山影:27歳から本格的に絵を描き始めたというのにも驚きました。

小林:ところで、いわさきちひろというと、皆さんはどんなイメージをお持ちでしたか。

ナツコ:あれは小学校の教科書に出ていた…「白いぼうし」だったでしょうか。でも、ストーリーはあまりよく覚えていないんですよ。ただ、挿絵がいわさきちひろさんで、あのお話の雰囲気とちひろさんの絵だけは、今でもすごく心に残っています。

宮坂:私も同じく国語の教科書です。小学校の6年間、表紙はいわさきちひろでした。中にもちひろさんの挿絵がたくさんあって、授業中はついつい絵ばかり見ていました。

ミツミ:私は幼少の頃母が好きだったのか何冊か絵本を持っていて、思い返すと子供ながらに好きだったようです。
すっかり忘れていましたが今回改めて原画や絵本を見て、全然違うタイプなのにもしかしたら自分の絵のどこかに無意識に影響があるのではないかと感じました。

小林:今回の展示では、いわさきちひろの他にも国内外の絵本作家の原画がたくさん見られましたが、そちらのほうはいかがでしたか。

山影:特に感動的だったのは、エリック・カールの原画が見られて、しかもコラージュする前の素材も展示されていたことです。

宮坂:えっ素材!? 私、見落としました…。どこにあったんですか。

山影:展示室の中央に、ガラスケースに入っていましたよ。あれはおもしろかったです。ティッシュ(注1)のような薄い紙にいろんな柄のパターンを絵の具で描いていて、この素材を作業場のひきだしのなかにいっぱい入れていたそうですよ。

ナツコ:ホントに薄〜い紙なんですよね。こうやって制作しているんだ!と思いましたよ。私もパーツを組み合わせて作っているので勉強になりました。

宮坂:くやし〜! もう一回見に行こうかな。

ミツミ:イラストレーターとしてはあの薄紙を見ただけでも価値がありました!

小林:今回の展覧会はちひろ美術館に所蔵しているものが中心なので、おそらく美術館に行けば見られるんじゃないでしょうか。

小林:他にも今回は、多くの作家さんの絵を展示していましたけど、皆さんは他に好きな作家さんっていますか。

山影:元永定正、エリック・カール、それからブルーノ・ムナーリの仕掛け絵本などが特に好きです。

ナツコ:私もエリック・カールが好きです。あと、山本容子の白雪姫も気に入ってます。絵本作家でない画家が描いた絵本に惹かれるのです。

ミツミ:展示されてた作家の中にビエネッテ・シュレーダーの原画が一点だけあって嬉しかったです。
それとマーチン&アリス・プロベンセン!ジャケ買いした絵本を持っていて名前も覚えてなかったのに大好きでした。今回名前を覚えられて収穫でした。

宮坂:長新太さんの「きゃべつくん」を初めて読んだときには衝撃を受けました。とにかく次がどうなるのか気になって仕方ないから、ページをめくっちゃう。長新太さんの絵本は、息子も小さい頃から大好きです。あと、村上康成さんの絵は特に目がかわいくて好きです。そして荒井良二さんの絵本も大好き!というより、もう憧れです。

小林:酒井駒子さんは絵もうまいし、色彩もきれいで好きです。内省的な世界観に共鳴できます。ちひろさんのような静けさがあって子供の顔にも個性がありますよね。

entrance.jpg(注1)ティッシュではなく、よくあるワイシャツなどの包み紙。ちなみに糊は壁紙を貼る糊を使用している。(雑誌「みづゑ」2002年春号のエリック・カール特集記事より)




損保ジャパン東郷青児美術館ウェブサイト

chirashi.jpg●会期
2012年7月7日(土)〜8月26日(日)

開館時間
午前10時〜午後6時(入館は閉館30分前まで)

休刊日
月曜休館(ただし7月16日は開館)

観覧料
一般:1000円(800円)
大・高校生:600円(500円) ※学生証をご提示ください
65歳以上800円 ※年齢のわかる物をご提示ください
中学生以下無料 ※生徒手帳をご提示ください
障害者無料 ※障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者手帳)のご提示によりご本人とその介護者(1名まで)は無料。ただし、被爆者健康手帳をお持ちの方は、ご本人のみ無料。
※( )内は20名以上の団体料金 および前売り料金
※前売り券はチケットぴあ、ローソン、セブンイレブンでお求めください
(6月30日から8月25日まで販売)

会場
〒160-8338 新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階

003/板橋区立美術館
  「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

003/板橋区立美術館
  「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

毎年開催 2012年は会期6月30日(土)〜8月12日(日)

世界中から応募を募り、入選した作品を展示

推薦者:梅津由子


 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展は、世界最大の規模を誇る絵本原画コンクールとして知られています。板橋区立美術館では1981年より毎年、この原画展を開催しています。
 今回は、2012年の会期中に訪問した美術館内や展示の様子をご紹介します。

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ボローニャ展の会期限定でオープンしている「カフェ ボローニャ」

 まず、素通りできない魅力的な「カフェ ボローニャ」へ。ここは手作り感にあふれています。お豆、ごぼう、雑穀などが入ったおかず系パンや、オレンジ、チョコなどのスィーツ系のパン。フォカッチャ、パスタ、カレーなどもありました。会期中以外はこのスペースはなく飲食販売もないのだそうです。お昼時にはたくさんの方で列になり、トレーを持った人々はカフェ内や外へとそれぞれのお気に入りの場所へと散ってゆきました。

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左:手作り感あふれる店内 /右:お皿にも小さなこだわりが

原画展示スペース

 2012年は世界60ヶ国2685人ものイラストレーターから応募があり、その中から日本人7人(今井彩乃、いとのみか、小輪瀬譲安、工藤あゆみ、刀根里衣、武政涼、スズキサトル)を含む19ヶ国72人(組)の作家が入選し、その全入選作品を展示しています。
 絵本原画というより、世界中の作家の表現方法もさまざまなタイプのアート作品といった感じで、異空間に来てしまったように楽しめました。
 特別展示として、ボローニャSM出版賞を受賞した台湾のアーティスト、ペイジ・チュー(Page Tsou)の絵本作品をあわせて紹介していました。この賞は2010年より入選作家の中から、35歳以下を対象に授与され、賞金とスペインのSM出版から絵本を出版される権利が与えられ、翌年のブックフェアで新作絵本として発表されます。
 他には、入選作品で絵本として出版されているものや、入選作家の別の絵本、ラガッツィ賞を受賞した絵本の展示もあり、実際に手にとって見ることができます。カフェ併設のブックショップで売っているものもあるのですが、印刷物でありながら、それ自体美術品のようです。展示室ロビーに設置されたテレビでは、審査の様子やブックフェアの様子がわかるドキュメンタリー映像も見る事ができます。
 また、会期中には、絵本に関するさまざまなイベント、ワークショップも予定されているそうです。

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左:受賞作品より。今井彩乃さんの作品 /右:受賞作品より。ロベルト・ダヴィッドさんの作品

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左:入選した作家が出版した絵本 右:展示会場への階段には、入賞作品のひとつがプリントされている

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左:ラガッツィ賞を受賞した絵本棚。装丁や造本も凝ったものが多くて魅力的

原画展の歴史

 「ボローニャ国際絵本原画展」は、ボローニャで1967年から毎年開催されおり、このコンクールは、世界で唯一の児童書専門のブックフェア(Bologna Children’s Book Fair)に伴うイベントの1つです。
 日本では最初に兵庫県の西宮市大谷記念美術館で展示が始まりました。その後、板橋区立美術館でも開催するようになり、1981年より毎年かかさず展示を続け、今年で32回目になるそうです。子どもの本のために制作された作品を5枚1組にすれば誰でも応募でき、毎年世界中からたくさんの作品が集まり、国籍の異なる審査員たち(2012年は荒井良二さんが5人の審査員の中の1人です)による審査が行われています。そこでは、多くの絵本を出版している作家の作品も、まだ出版歴のない新人の作品も、同一のテーブルに並べられ、3日間で審査していました。館内で流れているドキュメンタリー映像で、審査の様子がわかります。おもしろいです。
 毎年、日本人イラストレーターたちの応募も多数あり、入選をきっかけにボローニャへ行く日本人イラストレーターも増え、海外の出版社から出版するケースも出てきているとか。
 原画展への応募や入選とは別に、現地ブックフェアにブースをつくっている世界中から来た出版社に直接売り込みを重ねて出版にこぎつけるケースもあるそうです。
 今回入選なさっている今井彩乃さんは2003年から6回目の入選だそうで、最初の絵本はイギリスから出版されたそうです。
 今日本で活躍されている絵本作家三浦太郎さんはボローニャ展入選から絵本作家としてのスタートをしたそうです。
 「ボローニャ国際絵本原画展」は、純粋に世界中の作家の作品に浸れる場でありながら、作家の登竜門としての役割をはたす場ともなっていているようです。


ポスター、チケット、グッズ等にも注目!

 2012年のポスターやチケットは、ヨッチ(Yocci)こと、のだよしこさんの描き下ろしです。のださんは大阪ご出身で子どものころから西宮市での「ボローニャ国際絵本原画展」を見て育ちました。大阪芸大卒業後、ボローニャ美術学院で学び、イタリアと日本を拠点に活躍され、原画展には2007年と2010年に入選しています。のださんのイラストは、他に案内看板、入口などに使われていて、館内のショップでものださんの絵本やグッズを買うことができます。

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カフェ併設のブックショップにはラガッツィ賞受賞絵本や、原画展入選作家の絵本作品が並ぶ

 都心の外れに少し足を伸ばしていったら世界中の絵に囲まれて、プチ海外旅行をしてきたような気分でした。丸一日かけて観覧するのがオススメです。


取材協力:板橋区立美術館 高木佳子



板橋区立美術館ウェブサイト


flag.jpg●会期
2012年6月30日(土)~8月12日(日)

開館時間
午前9:30から午後5:00
(入館は午後4:30まで)

休館日
月曜日 但し7/16は祝日のため開館し、翌日休館
板橋区立美術館は、①ボローニャ展を含む絵本に関する展示、②江戸狩野派に関する屏風や掛け軸等の古美術展示、③大正から昭和にかけての近年の前衛的作品の展示を3本柱として特別展示をしており、会期以外は休館となり、常設展はありません。

観覧料
一般600円
高・大生400円
小・中学生150円

当美術館は「ボローニャ国際絵本原画展」、20名以上団体割引、65歳以上高齢者割引、身障者割引あり
毎週土曜日は、小・中・高校生は無料で観覧できます。






002/安曇野ちひろ美術館(長野県北安曇郡)

002/安曇野ちひろ美術館(長野県北安曇郡松川村)

五感に働きかける美術館

推薦者:世永逸彦


絵本画家・いわさきちひろ(1918~1974)は、「世界中の子どもみんなに平和としあわせを」という願いをこめて、子どもを生涯のテーマとして描き続けた画家でした。安曇野ちひろ美術館では、約9400点の遺作のなかから、代表作や絵本の原画などを展示し、画業の全体像を紹介しています。のどかな田園風景が広がる安曇野・松川村は、ちひろが折にふれて訪れ、心のふるさととして愛した土地です。館内には、5つの展示室のほか、国内外の絵本約3000冊が読める絵本の部屋や、こだわりのおもちゃがある子どもの部屋、北アルプスを望むカフェ、ちひろグッズがそろうミュージアムショップも併設されています。周囲には36,500㎡の安曇野ちひろ公園(松川村営)が広がり、四季折々の花々を楽しみながら、1日ゆっくりと過ごすことができます。

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安曇野ちひろ美術館との出会い

chihiro_usagi-isu.jpg約10年ほど前の私のエピソードになりますが…「子どもを連れて美術館へ行ってもゆっくり鑑賞なんてできない!」そんなふうにあきらめていました。しかしある夏の日に、この美術館を訪れると…。建物の周りの広い敷地と駐車場、安曇野の心地よい澄みきった空気。建築家の内藤廣氏が松川村の山のフォルムから発想したであろう木造建築。そして館内に入ってまず目に飛び込んで来たのは、建築家 中村好文作の「うさぎ椅子」。実はこの椅子、私にとって非常に思い出深いものでした。長女の出産祝いにと妻の幼なじみでもある友人の建築家から同じものをもらい、以来7〜8年間、我が家にも生息していたのです。ここには美術館の堅苦しさはまったく無く、木の温もりの心地よさからすぐに親しみを持ちました。どうやら妻と子どもたちもすっかり気に入った様子で、各々が楽しい時間を過ごしました。


こだわりのある館内カフェ

カフェのテーブルには、可憐な小さな花が生けてありました。スタッフの皆が、自宅の庭や田んぼのあぜ道から摘んでくるようです。カフェの外には、ハーブや安曇野らしい花を寄せ植えした鉢が置いてあります。メニューにあるハーブティーのハーブがどんな植物かを知ってもらいたいとの配慮なのだとか。まさに信州の自然の恩恵。私も昼食をここでとってみると、お茶やコーヒー、りんごジュースからワイン、ビールまで飲み物も多彩でした。おやきやケーキなどひと手間かかった味付けや盛りつけが、食欲と同時に鑑賞意欲までも駆り立ててくれます。

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左上:ちひろが愛した 苺のババロア/右上:地粉おやき/左下:葡萄酒(モンシェルヴァン)/右下:庭には北アルプスを望むパラソル席も


昼寝のできる美術館

昼下がりには、枕とクッションが備えつけられた北欧製の「寝椅子」に横たわってみるのがお勧めです。当時、いささか睡眠不足で生活をしていた我が身には、数十分でもウトウトと昼寝のできるスペースがとてもありがたいものでした。いつもなら「早くしろ」というおとうさんがぐっすりと眠っているので、おかあさんや子どもたちは、安心して展示室やミュージアムショップを楽しむことができます。他にも、芝生で遊ぶ人、本を読む人と美術館が公園の一部になったような環境にほっとします。

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美術館の外へ出る楽しみ──安曇野ちひろ公園

ここでは、日替わりの入館証をつけると、「丸一日、出入り自由」というシステム。周りには、魅力的な場所がたくさんあります。美術館をとりまく36,500㎡の安曇野ちひろ公園。ここで一番印象に残っているのが、原田和男作「シデロイホス」という、楽器の様に魅力的な音の出る作品。主に小さな子どもたちが叩いて鳴らしています。また、チェコの絵本作家・パツォウスカーがデザインした2つの池があり、都会から来た親子がリゾート地に訪れたかのように、なごみ遊んでいます。

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ミュージアムショップ

「展示室の作品の前を一瞬にして通り過ぎる人が、一枚の絵はがきを買うために、何分もかけることもある」とは松本猛 氏(ちひろ美術館顧問)の言葉。展示室と同じくらい重要な場所ということらしい。このミュージアムショップにも世界中からセレクトされたたくさんの絵本が置いてあります。あなたのお気に入りの絵本画家とここで出会ってみてはいかがでしょう。

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五感に働きかけるような発想が、この美術館の人気の秘密なのかもしれません。また、何回も足を運びたくなる場所でもあります。東京からは車で3時間の距離ですが、この春から夏にかけてお勧めの美術館です。

撮 影:有賀 傑、橋本裕貴、講談社写真部・林 桂多


安曇野ちひろ美術館ウェブサイト
http://www.chihiro.jp/azumino/

chihiro_art1.jpg●入館料
大人800円、高校生以下無料
団体(有料入館者20名以上)
学生証をお持ちの方、65歳以上は100円引
障害者手帳をご提示の方は半額、介添の方は1名まで無料
視覚障害のある方は無料

●開館期間
3月1日~11月30日

●休館日
第2・4水曜日(祝休日は開館、翌平日休館)※GW・8月は無休
冬期休館12月1日〜2月末日

●開館時間
9:00~17:00(GW・8月は18:00まで)

安曇野ちひろ美術館 〒399-8501 北安曇郡松川村西原3358-24
TEL:0261-62-0772 / テレフォンガイド:0261-62-0777

1997年開館、地上1階建て







001/イルフ童画館(長野県岡谷市)

001/イルフ童画館(長野県岡谷市)

ユーモアと芸術性たっぷり! 童画の王様・武井武雄の世界


みどころ 1
武井武雄作品メインフロア──童画・版画・著書等の作品を中心に展示

ilf03+.jpgこのイルフ童画館では武井武雄(明治27年~昭和58年)の数多くの作品が展示されています。武井武雄は、岡谷市(旧平野村)出身の日本を代表する童画作家。『おこりっぽいやま』『にしきのむら』などの絵本をはじめ、『コドモノクニ』『キンダーブック』といった児童向け雑誌で活躍しました。日本で初めに「子どもに与えるために大人が描いた絵」という定義のもと、「童画」という言葉を自ら作り出し、これを芸術の域にまで高めたのが武井です。大胆な構図や幾何学的な描線、モダンかつナンセンスな味わいは、明治、昭和という時代を超えた今でもなお、見る人に新しさを感じさせてくれます。
数多くの童画作品のほか、館内では額縁画、版画、吊りオブジェ、おもちゃの研究・創作、刊本など様々な展示が見られます。刊本とは、絵、文字、装幀、函、素材、印刷方法に至るすべてにこだわって一冊ごとに制作された「本の芸術作品」です。装丁に興味がある人はもちろん、純粋にかわいくておもしろいものが好きという人にもきっと楽しめることでしょう。刊本は139冊の所蔵の中から15冊位を入れ替え展示しています。
ちなみに「イルフ」とは「古い」のさかさま読み、つまり「新しい」という意味で、これも武井の造語です。「どこの国の言葉?」と思いました?

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「刊本」作品展示の一部。記番署名入りで300部限定を原則に上梓。毎回異なる技法と素材を用い、絵も文もすべて武井のオリジナル。約半世紀、武井のライフワークだった。


みどころ 2
日本で活躍する童画家たちの紹介、モーリス・センダック原画常設展示

・第1企画展示室
童画に関するイベントフロアとして、日本の代表的な童画家の作品を随時企画展示しています。会期中にはトークショーや親子で楽しめるワークショップなどのイベントも。詳しくは下記ウェブサイトをご覧下さい。
・第2企画展示室
『かいじゅうたちのいるところ』『まよなかのだいどころ』でおなじみのアメリカの絵本作家モーリス・センダック(1928年〜)の原画が常時展示されています。センダックの繊細な描写、美しく均整のとれた色づかい…印刷ではわからないところを是非「原画」で御覧下さい!
ilf04+.jpgセンダック自身は子どものころ病弱で、母親がいる台所が遊び場所だったといいます。絵本に登場する子どもはいわゆる「いい子」ではなく、ストーリーも教育的ではありません。当初は親たちから批判を浴びましたが、自由な視点で描かれたセンダックワールドは世界中の子どもたちから愛され続けています。


みどころ 3
絵本ライブラリー「はらっぱ」

1階のミュージアムショップには絵本のほか、武井の童画がさりげなく入ったオリジナルのステーショナリーや見ているだけでも楽しいおもちゃなどが並んでいます。お土産に買うも良し、見て満足するだけでも良し! そして…その奥の絵本ライブラリー「はらっぱ」は特にオススメです。約2000冊の絵本があり、ここでは誰でも自由に読むことができます(無料)。素朴でかわいいおもちゃもあり、靴を脱いでくつろげるので、小さな子ども連れにはありがたいですね。毎週日曜日にはいろいろなイベントをおこなっています。

推薦者:宮坂佳枝
写真提供:イルフ童画館

イルフ童画館ウェブサイト
http://www.ilf.jp/

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大人800円(団体10名以上600円)
中・高校生400円(団体同300円)
小学生200円(団体同150円)

●休館日
毎週木曜(祝日の場合は開館)
※12月31日〜1月1日の他、展示替えによる臨時休館あり

●開館時間
9:00~18:00

イルフ童画館 〒394-0027 長野県岡谷市中央町2-2-1 TEL 0266-24-3319
1997年開館、地上3階建て(エレベーター有り)